暮らしやすさとは、人それぞれです。特に定義も法則も無く、漠然としています。しかし、せっかく家を建てるなら、家族がイメージする夢を形にするのは当然ながら、長い目でみて「暮らしやすい家」を建てたいものです。「暮らしやすい家」を作るために、私たちが大切にしている3つのことをお伝えさせていただきます。

1.暮らしやすい間取り

これから家を建てようとされる方は、例えば4LDKが欲しいとか、20畳のリビングが欲しいとか、いろいろなイメージをお持ちになると思います。けれども、良い間取りは部屋をパズルのように組み合わせれば出来上がる訳ではありません。間取りを考える際には、おさえておきたい大切な要素がいくつかあります。

周囲の環境から考える

まずは土地の形状や環境、近隣との関係性、その土地が持っている個性をよく理解することが大切です。その上で、どの方向に開くと気持ちが良いか、光と風をどこから取り込むか等を検討します。"大開口は南側"という考えが一般的ですが、環境によっては北側に開いた方が気持ちが良いケースもあります。その土地に適した間取りを考えることが暮らしやすさのポイントです。

動線計画を考える

同じ家族でも、家の中での動きはそれぞれ違います。各々の生活をイメージし、家族みんなが動きやすい生活動線をつくる事は、間取りを考える上で欠かせません。また、毎日欠かす事のできない家事は、ひとつひとつの動きを短くつなぐ工夫が必要です。スムーズに動ける家事動線を検討し、ストレスの少ない生活を送るための間取りをご提案します。

収納計画を考える

収納計画は、ただ大きな納戸をつくれば解決する訳ではありません。"使うところに使うものを収納する"これが収納計画の基本です。まずは、持っている物を把握し、何をどこにしまうか、検討することが大切です。収納は間取りに大きく影響するので、設計の初期段階から物の居場所を考えることが、暮らしやすさにつながります。

2.飽きない家

何十年と住み続ける家は「飽きないこと」がとても大切だと思います。外観・内観ともに、普遍的なデザインや素材の経年美により、時とともにおもむきの増す家づくりを心がけています。素材の持つ美しさや個性を純粋に表現し、無駄のないデザインを目指しています。

地域に馴染む外観

建物の外観は、奇抜なデザインや目立つ色をなるべく使わないようにしています。私たちのアトリエがあり、生活の場である逗子・鎌倉・葉山には、風致地区という制度があります。「風致」という言葉には、「おもむき、あじわい、風趣」という意味があります。風致地区は、自然美を維持保存するために作られた制度で、建築の建て方や色、樹木の伐採、植樹などに一定の制限が加えられています。日々そういう環境にいるからこそ、建物の外観は目立つことよりも「馴染むこと」が重要だと感じています。街の風景に調和し、地域に馴染みむような、おもむきのある家を作りたいと思っています。

自然素材

私たちは、予算の許す限り、自然素材を使うことをおすすめしています。天然木は、木目柄をプリントした工業製品とは異なり、時とともに深い飴色に変化し、次第にそれぞれの木部が同じような濃さになるため、建物全体に味わい深い統一感が生まれます。自然素材は、工業製品のように商品そのものが廃盤になってしまうような事はありませんし、メンテナンスが可能です。日々の生活の中で少しづつ手をかけながら、長い時間使い込むことで愛着が湧くような素材を選定するように心がけています。

3.心地よい家

私たちは、一年を通して快適に生活できる家をつくりたいと思っています。そのために、外気温の影響を受けにくく、安定した室内環境をつくり出すことができる高気密・高断熱住宅に取り組んでいます。一方で、より豊かな暮らしが出来るように、風や光や景色といった外部の気持ち良さを積極的に取り込む設計の工夫をしています。

高気密+高断熱

冬、エアコンをいくらつけても暖かくならない、止めるとすぐに寒くなってしまう…その原因は、断熱性能にあります。断熱性能が上がれば、熱が逃げにくくなるため、より少ないエネルギーで家を温めることができます。エアコンを不必要に高温設定にすることなく、低温設定の弱運転を連続させることで、不快な気流を感じにくく、かつ低燃費で快適に過ごす事ができます。また、夏においては、太陽熱が屋根や外壁を熱し、その熱が室内に侵入します。天井や壁の表面温度が上がるので、エアコンがなかなか効きません。やはり断熱強化がとても効果的です。また、夏は不必要に日射を室内に入れないことも重要です。太陽熱のエネルギーは膨大で、いかに高効率エアコンをもってしても太刀打ちできません。これを防ぐためには庇や日よけといった建築の形状そのものにも工夫が必要です。

内と外の中間領域

気候の良いときは、室内より屋外のほうが何倍も気持ちが良いものです。高気密・高断熱住宅だからといって、室内に籠もっていては勿体ない。気軽に外に出ることができる「中と外の中間的な空間」があると、暮らしはとても豊かになります。室内の床がそのまま外に延びていて、その上に屋根があり、室内とは別のもうひとつの空間があったら、暮らしはより穏やかで心地良いものになると思います。